@article{ART000939293},
author={Kim Su Hee},
title={Consideration to"niouhyoubukyo kaorutyuzyo"},
journal={Journal of Japanese Culture},
issn={1226-3605},
year={2005},
number={26},
pages={189-201}
TY - JOUR
AU - Kim Su Hee
TI - Consideration to"niouhyoubukyo kaorutyuzyo"
JO - Journal of Japanese Culture
PY - 2005
VL - null
IS - 26
PB - The Japanese Culture Association Of Korea (Jcak)
SP - 189
EP - 201
SN - 1226-3605
AB - 匂宮三帖には、「匂ふ兵部卿・薰る中將」という呼称を含め、薰と匂宮との對照的な設定が隨所に見られる。兩者の芳香の違いをどうして「にほふ」と「かをる」という言葉によって象徵しているのか。上代の用例を檢討すると、「にほふ」が色彩感に富み、對象の「今」を、その「盛り」の一瞬として捉える生命感溢れる言葉であったのに對して、「かをる」の方は、色彩のないモノクロームなイメージで、精神的な面が强く、「過去」を響かせる表現になっていることが分かる。このような兩者の對偶性は源氏物語の表現とも深く關わっている。特に「かをる」の場合、薰に關する用例が、柏木の死の直後から引き續き四例も見られること、しかもそれが源氏や夕霧の視線によって、柏木との容貌の類似を語るものであったことには注目すべきであろう。要するに、薰の目の「かをり」は、薰にとっての「過去」すなわち、亡き實父の存在を意識してこそ用いられた言葉であって、それによって喚起されるのは、薰の誕生以前の不幸な「過去」の記憶に他ならない。その薰が「今」の自分に滿足できず、わが身の出生に不安を抱き、「過去」に脅かされ、實父の面影を追う懷疑的な靑年であるとしたら、まさに「薰る中將」という名称に堪える人物造型と言えるのであろう。すると、「匂ふ兵部卿・薰る中將」は、それぞれ「にほふ」人物、「かをる」人物と言えるのであろうか。いかにも對照的な二人の主人公は、一見するかぎり、まさに「匂ふ兵部卿・薰る中將」と倂称するに値する。實際に匂宮を「かをる」と形容した用例は見あたらない。匂宮は徹底的に「にほふ」人物なのである。一方、薰に關わる「にほふ」の用例は匂宮よりも遙かに多く、また、「かをる」の用例においても壓倒的である。「かをる」人物として登場した薰は、實は匂宮以上に「匂ふ」人物なのである。ここに、ふたりの人物像がそれぞれの言葉のニュアンスをよく体現しているという捉え方ではおさまり切れない問題が孕まれていると言えよう。「匂ふ兵部卿・薰る中將」という倂称が、作者の計算濟の、用意周到な意図に基づくものであると考えるならば、以後の展開における問題も作者の意図と深く關わっていると考えるべきであろう。從って、「にほふ」と「かをる」という名称は非常に象徵的なものであると同時に、單なる象徵に止まらぬもう一つの裝置として複眼的に捉え直されるべきである。周知のように、薰は道心とともに俗物性をも顯著に窺わせる人物として論じられてきたが、その二重的な人物像を自ずから浮き彫りにさせる一つの裝置として、「匂ふ兵部卿・薰る中將」が示唆するところは大きいのであろう。
KW -
DO -
UR -
ER -
Kim Su Hee. (2005). Consideration to"niouhyoubukyo kaorutyuzyo". Journal of Japanese Culture, 26, 189-201.
Kim Su Hee. 2005, "Consideration to"niouhyoubukyo kaorutyuzyo"", Journal of Japanese Culture, no.26, pp.189-201.
Kim Su Hee "Consideration to"niouhyoubukyo kaorutyuzyo"" Journal of Japanese Culture 26 pp.189-201 (2005) : 189.
Kim Su Hee. Consideration to"niouhyoubukyo kaorutyuzyo". 2005; 26 : 189-201.
Kim Su Hee. "Consideration to"niouhyoubukyo kaorutyuzyo"" Journal of Japanese Culture no.26(2005) : 189-201.
Kim Su Hee. Consideration to"niouhyoubukyo kaorutyuzyo". Journal of Japanese Culture, 26, 189-201.
Kim Su Hee. Consideration to"niouhyoubukyo kaorutyuzyo". Journal of Japanese Culture. 2005; 26 189-201.
Kim Su Hee. Consideration to"niouhyoubukyo kaorutyuzyo". 2005; 26 : 189-201.
Kim Su Hee. "Consideration to"niouhyoubukyo kaorutyuzyo"" Journal of Japanese Culture no.26(2005) : 189-201.