TY - JOUR AU - 조연팔 TI - 地方公共団体の出訴権に関する一考察 - 日本の法律上爭訟論を中心に - JO - DONG-A LAW REVIEW PY - 2009 VL - null IS - 44 PB - The Institute for Legal Studies Dong-A University SP - 109 EP - 138 SN - 1225-3405 AB - 日本国憲法第76条第1項では「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」と規定しているし、このような憲法の根拠によって制定された日本の裁判所法第3条第1項では「裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する」と規定している。その場合「法律上の争訟」が何を意味するのかが問題になる。これに対して判例上では「当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ,それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる」と言っている。法律上の争訟の問題に関してリーディングケースと言える板まんだら事件の最高裁判決では後者を否定して「法律上の争訟」に当たらないと判断したが本論文で比重をおいている宝塚市パチンコ店規制条例の最高裁判所判決と杉並区住民ネット訴訟では前者を否定して「法律上の争訟」に当たらないと判断している。宝塚市パチンコ店規制条例に対する最高裁判所判決に対しては賛成する見解よりも反対する見解が圧倒的に多い。私見としては国や地方公共団体がもっぱら行政権の主体として「国民に対して行政上の義務履行を求める訴訟」に限って「法律上の争訟性」を否定することなら最高裁判所判例に賛成したい。この理由としては次の通りである。
第一に、多数説が主張している公平性の問題であるが行政行為の相手方が行政訴訟を申し立てる場合には取消訴訟の排他的管轄の制限を受けるようになる。これに対して行政側が民事訴訟を申し立てる場合にはこのような制限を受けないのでまた公平性の問題が生ずる。
第二に、日本行政事件訴訟法第44条では「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事保全法に規定する仮処分をすることができない。」と規定しているから行政行為の相手には民事保全法上の仮処分が禁止される。これに比べて行政庁に限って民事保全法上の仮処分を認めるということは公平性の原則に反することになる。
第三に、このような行政上義務履行に対する民事訴訟を許容するようになれば行政側では誤った代執行などによって損害賠償責任を負けることができるし、このような責任を避けるために民事訴訟を通じて義務履行確保を実現しようとすると訴訟費用などをそっくりそのまま住民が負担するようになる。また行政庁に自ら義務履行を確保することができる権限を付与したにもかかわらずこれをしないで民事訴訟を通じて義務履行を確保するということは権力分立の原則にも反すると言える。このような理由で多数説には賛成しにくい。
日本の判例が地方公共団体の地位を財産権の主体としての地位と行政権の主体としての地位として区別して財産権の主体として地方公共団体が申し立てた訴えについては「法律上の争訟性」を認めていることにはそれなりに一理があると思われるが行政権の主体として地方公共団体が申し立てた訴えのすべてについて法律上の争訟性を否定することには問題があると思われる。何故ならば地方公共団体にもそれなりに地域環境保護、経済的な利益侵害の保護、参加権侵害の保護など自治権の侵害については「法律上の争訟性」を認めなければならない必要性があるからである。この点は地方自治の制度的保障が充分ではない韓国では日本よりも一層切実であると言える。
韓国においては住民に対する権利の制限又は義務の賦課に関する事項や罰則を含んだ条例を制定する時には必ず法律の委任が必要であるという規定(韓国の地方自治法第22条)と行政代執行法第1条がお互いに繋がって地方自治団体自ら独自的な規制権を行使することができない状態である。したがって行政代執行法第1条と地方自治法第22条を改正する必要性が切実であるといえる。
KW - DO - UR - ER -