@article{ART001747798},
author={ByungHoon Min},
title={『土佐日記』の方法 -「前の守」と「船君」と-},
journal={Journal of Japanese Culture},
issn={1226-3605},
year={2013},
number={56},
pages={207-222},
doi={10.21481/jbunka..56.201302.207}
TY - JOUR
AU - ByungHoon Min
TI - 『土佐日記』の方法 -「前の守」と「船君」と-
JO - Journal of Japanese Culture
PY - 2013
VL - null
IS - 56
PB - The Japanese Culture Association Of Korea (Jcak)
SP - 207
EP - 222
SN - 1226-3605
AB - 『土佐日記』は、仮名によって、日記を文学へと導いた作品である。そこには、試行錯誤の跡が散見し、虚構を思わせる所をはじめ、歌合の形、俳諧歌的な滑稽性などが取り混ぜられていることがわかる。それらは新しい文学の誕生を促す多様な外的環境として理解される。まるで、物語の親と言われる『竹取物語』が多岐の伝説や語源説話、また、史実を絡せて虚構化しているように、まだ、文学としては安定感のない様子を示している。作者を女性に仮託しながらもあらゆる所に男性の語り手の様子が見え、紀行でありながらも、実際は風土を描くのに十分な準備がなされておらず、殆んど人物の描写に焦点を合わせたり、詠歌の批評に集中したりする。 作品を読んでいくと、統一性に欠け、観点が女性の視角からいつからともなく男性の視角へと変わっていたり、ある地点から歌に対する批評が強まったり、それにともなう人への揶揄が増していく。また、貫之自身を表す呼び名も最初は「前の守」だったのが、中盤からは「船君」となり、あるところでは「船の長しける翁」とある。面白いのは、その扱い方が別個で、「前の守」のときは、官名がついているだけに事務的なイメージが強く、「船の長しける翁」の場合は、歌合の判者のような性格を帯びる。ところが、「船君」のときは、状況判断が鈍く、雰囲気の把握できない小心者として描かれており、なにより、詠歌の力の無い存在として描いている。しかもそこに滑稽性を加え、卑下している。貫之といえば当代第一の歌人だが、自分自身を諧謔的な人物に作り上げているのである。それは結局、航海という単調な暮らしだから素材が乏しく、そのために楫取と船君とを滑稽なものに描いて、そこに読み物にしようという試みが生れたのであろう。 だからといって、最初から文学としての位置づけを願った作品とは思えず、たとえば和歌において俳諧歌が即座で詠まれて捨てられるように、余興的な感覚で綴ったものと考えられる。そのために、最後のところに「忘れ難く、口惜しきこと多かれど、え尽くさず。とまれかうまれ、疾く破りてむ。」とあり、「早く破ってしまおう」と言っているのであろう。
KW -
DO - 10.21481/jbunka..56.201302.207
ER -
ByungHoon Min. (2013). 『土佐日記』の方法 -「前の守」と「船君」と-. Journal of Japanese Culture, 56, 207-222.
ByungHoon Min. 2013, "『土佐日記』の方法 -「前の守」と「船君」と-", Journal of Japanese Culture, no.56, pp.207-222. Available from: doi:10.21481/jbunka..56.201302.207
ByungHoon Min "『土佐日記』の方法 -「前の守」と「船君」と-" Journal of Japanese Culture 56 pp.207-222 (2013) : 207.
ByungHoon Min. 『土佐日記』の方法 -「前の守」と「船君」と-. 2013; 56 : 207-222. Available from: doi:10.21481/jbunka..56.201302.207
ByungHoon Min. "『土佐日記』の方法 -「前の守」と「船君」と-" Journal of Japanese Culture no.56(2013) : 207-222.doi: 10.21481/jbunka..56.201302.207
ByungHoon Min. 『土佐日記』の方法 -「前の守」と「船君」と-. Journal of Japanese Culture, 56, 207-222. doi: 10.21481/jbunka..56.201302.207
ByungHoon Min. 『土佐日記』の方法 -「前の守」と「船君」と-. Journal of Japanese Culture. 2013; 56 207-222. doi: 10.21481/jbunka..56.201302.207
ByungHoon Min. 『土佐日記』の方法 -「前の守」と「船君」と-. 2013; 56 : 207-222. Available from: doi:10.21481/jbunka..56.201302.207
ByungHoon Min. "『土佐日記』の方法 -「前の守」と「船君」と-" Journal of Japanese Culture no.56(2013) : 207-222.doi: 10.21481/jbunka..56.201302.207