@article{ART001823495},
author={SOONBOON CHEONG},
title={『讃岐典侍日記』における「公」と「私」と},
journal={Journal of Japanese Culture},
issn={1226-3605},
year={2013},
number={59},
pages={175-193},
doi={10.21481/jbunka..59.201311.175}
TY - JOUR
AU - SOONBOON CHEONG
TI - 『讃岐典侍日記』における「公」と「私」と
JO - Journal of Japanese Culture
PY - 2013
VL - null
IS - 59
PB - The Japanese Culture Association Of Korea (Jcak)
SP - 175
EP - 193
SN - 1226-3605
AB - 『讃岐典侍日記』は、日記名から明らかなように、堀河天皇に典侍として仕えた讃岐(藤原長子)によって書かれた日記文学である。『讃岐典侍日記』は、公的な性格の日記というには、個人的な視点に立っての主意的な筆致が多く、また身辺雑記というには記述対象が公的に過ぎる。本稿では、作者長子が典侍という公的な立場から出発しつつ、いかにして「私」の世界へと移行していくかのことについて考え、女房日記の文学性をどこまで認められるかの問題に一つの方向性を示してみた。 まず、「堀河天皇の看病記」の上巻は、公的な時間の枠組みに依拠して示される漢文日記とは異なって、きわめて主観的な時間に基づき、天皇の生の姿をつぶさに写し出している。また、天皇の死の絶体絶命の瞬間を描く合間に、天皇からの寵愛ぶりを表わす「私」のエピソードを挟み込み、個性的な文脈をなしている。 また、「堀河天皇の追慕記」の下巻は、亡き天皇に対する私的な感懐をより強くし、鳥羽天皇に仕えるほぼすべての場面において堀河天皇を思い出すが、中でも、自分勝手な行動をも優しく包み込んでくれた天皇と「家の子」と言われたことや、五節の雪の朝を供にし優雅な言葉を交わしたこと、そして天皇に退出を引き止められ軽口を言われたことなどを、特筆する。これらの場面は、いづれも二人の親密な関係を表わすものであり、中には愛妾であった長子が天皇の侍寝をしたことを連想させる濃密なものになる場合もある。 結局、『讃岐典侍日記』は、天皇という至尊の傍らに侍して病気と崩御の過程を書き記すという公的な立場から出発しているとはいえ、外在する公的な枠組みからははみ出た、あくまでも内密な「私」の世界を作り上げていると見られる。叙述対象である天皇は、敬慕すべき至尊ではなく、病床に苦吟する一人の人間として、また寵姫を優しく思いやる一人の男性として描かれる。作者讃岐典侍は、天皇という「公」的な存在を理想的な恋の相手へと変質させることに「私」の視座を見付け出し、男性の漢文日記とは異なる、個性的な世界をなしていると思われる。
KW -
DO - 10.21481/jbunka..59.201311.175
ER -
SOONBOON CHEONG. (2013). 『讃岐典侍日記』における「公」と「私」と. Journal of Japanese Culture, 59, 175-193.
SOONBOON CHEONG. 2013, "『讃岐典侍日記』における「公」と「私」と", Journal of Japanese Culture, no.59, pp.175-193. Available from: doi:10.21481/jbunka..59.201311.175
SOONBOON CHEONG "『讃岐典侍日記』における「公」と「私」と" Journal of Japanese Culture 59 pp.175-193 (2013) : 175.
SOONBOON CHEONG. 『讃岐典侍日記』における「公」と「私」と. 2013; 59 : 175-193. Available from: doi:10.21481/jbunka..59.201311.175
SOONBOON CHEONG. "『讃岐典侍日記』における「公」と「私」と" Journal of Japanese Culture no.59(2013) : 175-193.doi: 10.21481/jbunka..59.201311.175
SOONBOON CHEONG. 『讃岐典侍日記』における「公」と「私」と. Journal of Japanese Culture, 59, 175-193. doi: 10.21481/jbunka..59.201311.175
SOONBOON CHEONG. 『讃岐典侍日記』における「公」と「私」と. Journal of Japanese Culture. 2013; 59 175-193. doi: 10.21481/jbunka..59.201311.175
SOONBOON CHEONG. 『讃岐典侍日記』における「公」と「私」と. 2013; 59 : 175-193. Available from: doi:10.21481/jbunka..59.201311.175
SOONBOON CHEONG. "『讃岐典侍日記』における「公」と「私」と" Journal of Japanese Culture no.59(2013) : 175-193.doi: 10.21481/jbunka..59.201311.175