@article{ART001823497},
author={Junyoung Oh},
title={夏目漱石と飛行機},
journal={Journal of Japanese Culture},
issn={1226-3605},
year={2013},
number={59},
pages={215-229},
doi={10.21481/jbunka..59.201311.215}
TY - JOUR
AU - Junyoung Oh
TI - 夏目漱石と飛行機
JO - Journal of Japanese Culture
PY - 2013
VL - null
IS - 59
PB - The Japanese Culture Association Of Korea (Jcak)
SP - 215
EP - 229
SN - 1226-3605
AB - 本稿では、まず19世紀末のヨーロッパで始まった飛行機ブームに便乗して、その熱風に包まれて行った明治40年代の日本国内における航空事情を概観した。特に、当時日本の飛行機ブームの先駆的な役割を果たした『萬朝報』を中心に、毎日のように報道された飛行機関連記事や出来事などを紹介し、それらが日本の航空界にどのような影響を及ぼしていたのか、その経緯を探ってみた。そこからは飛行機に対して、空という未知の世界への探検ㆍ冒険心を刺激し、空への憧憬を現実化してくれる具体的な科学技術の総体として見ていたことや、利便性に着目し新しい交通手段としての可能性を探し出そうとする動きや、新しい玩具あるいは娯楽としての魅力に注意を払っていたことや、新しい武器体系としての軍事的な効用価値に注目していたことなど、実に多様な分野における飛行機の有効性と発展可能性に眼をつけていることが確認された。 このような時代的な状況の中で、当時の文学者たちは飛行機についてどのような反応を見せていたのか、その軌跡を辿ってみた。具体的に言えば、夏目漱石が明治41年の作品『三四郎』の中に「空中飛行器」を文学の素材として登場させていることに着目し、飛行機というものをどのような構想の元で取り入れ、かつ描き出していたのかについて考察を行なった。そこで、自作の中に飛行機のことをかなり詳しく描いている上田敏や志賀直哉などとは違い、飛行機をめぐる一つのエピソードという形でごく簡単に取り扱っていることを確認した。それは漱石が飛行機の効用性に鈍感だったためというより、文明の発展と人間の内面世界を等価に置きながら、冴えた眼で両者の力学関係を注視していたためであることが分かった。そしてこの作品では、飛行機は野々宮の優秀性を象徴する小道具として使われており、野々宮と美禰子の破局を暗示するものとしての意味をもつことと、こうした漱石の構想の底辺には、いくら優れた科学文明の産物といっても、それは感情のつながりの上で成り立つしかない人間同士の関係の中では、人間として備えるべく最も貴重な価値すなわち個性を抹殺する手段に過ぎないと見る認識が働いていることを確認することができた。
KW -
DO - 10.21481/jbunka..59.201311.215
ER -
Junyoung Oh. (2013). 夏目漱石と飛行機. Journal of Japanese Culture, 59, 215-229.
Junyoung Oh. 2013, "夏目漱石と飛行機", Journal of Japanese Culture, no.59, pp.215-229. Available from: doi:10.21481/jbunka..59.201311.215
Junyoung Oh "夏目漱石と飛行機" Journal of Japanese Culture 59 pp.215-229 (2013) : 215.
Junyoung Oh. 夏目漱石と飛行機. 2013; 59 : 215-229. Available from: doi:10.21481/jbunka..59.201311.215
Junyoung Oh. "夏目漱石と飛行機" Journal of Japanese Culture no.59(2013) : 215-229.doi: 10.21481/jbunka..59.201311.215
Junyoung Oh. 夏目漱石と飛行機. Journal of Japanese Culture, 59, 215-229. doi: 10.21481/jbunka..59.201311.215
Junyoung Oh. 夏目漱石と飛行機. Journal of Japanese Culture. 2013; 59 215-229. doi: 10.21481/jbunka..59.201311.215
Junyoung Oh. 夏目漱石と飛行機. 2013; 59 : 215-229. Available from: doi:10.21481/jbunka..59.201311.215
Junyoung Oh. "夏目漱石と飛行機" Journal of Japanese Culture no.59(2013) : 215-229.doi: 10.21481/jbunka..59.201311.215