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太宰治の「お伽草紙」論-「お伽草紙」における<桃太郎>の不在-

Hyun-Ju Lee 1

1인하대학교

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ABSTRACT

太宰治は戦時期に『お伽草紙』を執筆しているが、その中には日本人ならばだれもが知っている「瘤取り」「浦島さん」「カチカチ山」「舌切雀」など4つの昔話で構成されている。内容は太宰特有の筆致で原典をみごとにパロディー化し、結論を逆転させるなど新しい太宰文学を構築させている。しかし「お伽草紙」に日本人にもっとも知られている「桃太郎」が不在していることに注目してみた。太宰自らも述べているように当時桃太郎像は<日本一の旗を持っている>男として描かれ、軍国主義を象徴する人物として知られていた。このように桃太郎像は時代の流れによって、様々な姿で変貌してきたのである。特に小学校の国語教科書の中には素直な桃太郎から太平洋戦争後には英米と戦う強い戦士まで桃太郎像の変貌が著しく現れている。太宰が持っている<日本一の旗を持っている>桃太郎像は明治30年ごろから登場しはじめて、太平洋戦争とともにふたたび軍国主義の象徴として描かれていることがわかる。太宰はいままで様々な姿で変貌しつづけてきた桃太郎像を批判しながら、これ以上桃太郎について言及することを拒んだのである。また芥川龍之介の「桃太郎」を意識した可能性も否定できない。

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